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なめてんのかオッラァーン!!!!!!!

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父親がロロノア・ゾロに憧れた結果、僕がメイドカフェで黒歴史を生んでしまった話を聞いて下さい

「父さんは、ロロノア・ゾロが、一番好きだ」

 

 

突然の告白だった。一家団欒、楽しい楽しい夕食の時間のことである。

いきなり男色を告白され、しかもそれがアニメや漫画のキャラクターなのである。

中学1年の一般男子には刺激が強すぎた。

 

 

「男気が、たまらん」

 

 

たまらんらしい。母親も突然の告白に引き気味である。

そもそもワンピースのワの字も知らないであろうオッサンなのだ。どこで覚えたのだ、ロロノア・ゾロを。そしてその男気を。

 

困惑している我々をよそに、父は

 

 

男たるもの寡黙であれ

男は女を傷つけてはならない

男にはやらなきゃならない時がある

 

 

と、覚えたてのような浅い男性像を披露している。

 

 

 

完全にロロノア・ゾロに陶酔しているようで、

へ〜わかった と適当に相槌を打つ息子の言葉など何一つ聞こえていなかった。

 

 

 

そしてその間も遺言を残すかのような小声で

 

三千世界

 

とボソボソ喋っていた。

 

 

 

 

 

 

2年後のことである。

 

中学3年生という思春期真っ只中の男子は、母親と共に東京へ遊びに来ていた。

この日は東京在住の叔母に東京を案内してもらうことになっていた。

 

母親たちの「アンタ、どこ行きたい?」に対して無愛想に「どこでもいい」と答える少年は、自らのことを 非常にクールだ と感じていた。

 

 

 

 

少年は、遅咲きだった。

 

 

 

 

親がいないと何もできないくせに、親と歩くのを恥じらう遅咲きboyがそんな調子のため、叔母が観光スポットを提案してくれていた。

 

 

原宿 渋谷 六本木 新宿 五反田 丸の内

 

 

良いじゃん良いじゃん と喜ぶ母親、そして反抗期のため ウーン と不満気な少年

 

 

  

俺は、秋葉原に、行きたい

 

 

 

だが気恥ずかしくてそんなことは言えない

 

 

その時、少年の濁った瞳から何かを察したのか、叔母が突然

 

アタシ、秋葉原メイドカフェに行ってみたい

 

と言い始めたのだ。

 

 

 

 

ッヘ〜〜〜〜〜〜〜〜??????まあ良いんじゃね????メイドカフェはちょっと微妙だけどまあ全然???秋葉原は??????良いっていうか???????????僕もそれは思ってたっていうかァ〜〜〜〜ッッ!?????

 

 

親の前では「俺」ではなく「僕」と言うように教育されてきた少年は、反抗期ながらそのルールをしっかり遵守し、精一杯の誤魔化しをしながら秋葉原行きを承諾した。

 

 

 

その1時間後、我々はメイドカフェの前にいた。

フリフリのエプロンを身に纏った可愛らしい女の子たちが、この扉の向こう側にいる。

「アンタ、先に行きなさいよ」と母親に急かされるも、顔を真っ赤にしながら「行きたいって言ったの僕じゃねえし」と反発し、叔母が扉を開くことになる。

 

 

 

お帰りなさいませご主人様〜〜〜〜〜!!!!!

 

 

 

少年は縮み上がっていた。それと同時に、父親の言葉を少年は思い出していた。

 

 

 

 

 

「男たるもの、寡黙であれ」

 

 

 

 

ほどなくしてメイドさんがオーダーを聞きに来る。叔母は青っぽいドリンクを注文し、母親はパスタか何かを注文し、少年のターンになる。

 

 

「これで」

 

 

ブラックコーヒーを指差した。

 

 

 

キマった。完全に落ちた。今この瞬間、全メイドが俺に恋をした。そうだ、父の教えは間違っていなかったのだ。

 

 

 

父こそが正義だ。英語で言うとジャスティス。フランス語だとフォアグラ、ドイツ語だとソーセージ、韓国語ならチゲだろう。

 

 

2年越しの今、父の教えの本当の意味を理解したのだ。

 

 

 

 

「え〜アンタこっちにしな!」

 

 

母親のせいで、一緒にチェキを撮れるサービスが付いてくるオムライスセットになってしまった。

 

 

フッザケンナヨ!!!!!!!!!!!

 

 

だがしかし、それを言ってしまってはメイドさんが怖がってしまうと思った少年は「ああ」と一言発し、オムライスを承諾した。

 

 

「男は女を傷つけてはならない」

 

 

そうだろう?父さん。

 

 

まあ実際のところ今思うと本当はチェキを撮りたかったのかもしれない。

 

 

 

そうしてオムライスが運ばれてくると、メイドさんが一緒におまじないをかけようと提案してきたのだ。

 

 

 

 

「男には、やらなきゃならない時がある。」

 

 

 

 

父の教えである。

 

 

 

寡黙な男を演じている彼は、ボソボソと小声で 萌え萌えきゅん と発し、美味しいオムライスを完成させたのだ。実際、オムライスは普通に美味しかった。

 

そうして食べ終わった頃に、チェキ撮影の時間ということを告げにメイドさんがやってくる。どうやらここのお店では好きなメイドさんを1人指名して一緒に撮影をするというシステムらしい。

少年は恥ずかしがりながら、さっき一緒におまじないをかけたメイドさんを指名したのだ。人生初指名である。

 

 

一段高くなっている撮影スペースにメイドさんと向かい、一緒にハートマークを作って撮影をする。

 

 

 

渡されたチェキに写った少年は、顔が真っ赤であり、ツーショットということでやや笑顔であり、なのに気恥ずかしさから若干顔面がこわばっており、それでいて父の教えを守ろうと口を一文字に結んでいた。ちょっとだけ、気持ち悪い顔をしていた。

それと、どうやらメイドさんがチェキに好きな言葉をサインしてくれるサービスもあったらしいので、されるがままにサインをしてもらった。

 

 

 

 

 

時は流れて、2021年。

 

実家の母親から「片付けしたらチェキが出てきたけど捨てていいか」との連絡がきた。

何のチェキだったのか思い出せず実家に行くと、かつてのメイドさんとのツーショットチェキを手渡された。

 

「なんか書いてあったわよ」

 

と言われ確認すると、そこには

 

 

 

 

 

「三千世界」

 

 

と一言書いてあった。

 

 

 

 

俺は剣士になっていた。

 

 

 

 

そして父は今、頭文字Dにハマっている。

男たるもの、ハチロクらしい。

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