見せる収納というライフハックに怯える
恐れ慄いた。
高校を卒業して、いよいよ大学生活を送ることになった僕は、それはもう、ただひたすらに怯えていた。
高校1年の秋、両親の離婚を機に母親と2人で引越しをした。
ありがたいことに専用の部屋を与えてもらい、卒業をするまでその部屋で過ごしていた。
そう、過ごしていただけだったのだ。
部屋の扉にはダイソーで購入した『応接室』という表札を貼り付けたり、そのくせ部屋の中ではネットゲームに勤しむという、ネタにも真面目にも走れない自分がただ惰眠を貪っているだけだった。
大学生活
そう、大学生活となれば、それはもう勝手が違う。
どうですか?勝手、違いませんか?
幼少期や思春期の頃からセンスを磨いてきた方々は、「は?部屋なんてそうそうダサくなることないっしょ」という気持ちになるかもしれない、の、だが、
一方の僕はというと、『オシャレ』というカテゴリーに触れてこなかったタイプの人間。
観葉植物を、なんかよく分からんしどこに対してなのかも知らんけど、とかく何かしらに寛容な植物だと思い込んでいたくらい無頓着。なんだその奇妙な草は
しかし、そんな自分が大学への進学を機に、地元を離れ、一人暮らしをする。
もう今までの無頓着な自分を知る者はこの地に1人もいないわけで、大学デビューといえばそこまでなのだが、異性を呼んでも恥ずかしくない部屋にしていこう!という気持ちがイヤでも溢れ出る。
知識
そういう類のモノが、まずは欲しかった。
月並ながら、インテリア雑誌を購入し、その通りの部屋にしてみようと考えた。
『10,000円以下で作れるモテ部屋』のような見出しに、心が踊った。
多分、本屋さんで本当に踊っていたと思う。
というか小刻みに震えていたような気さえする。どうも、バイブレーターです。
この『10,000円以下で作れるモテ部屋』というのは、学生の味方であるようで、それはもう意外な落とし穴があり
安く済ませるためには『DIY』という工程が必要になるのである。
僕は早速、挫折をした
むしろ
『すのこを敷いて、ベッドフレームにしましょう』みたいなハックであるとか
『マスキングテープを壁に貼り付けて、その上から新しい壁紙をかぶせちゃおう』といった諸々については
「賃貸でそんなに好き放題していいんすか?」という疑問さえ生まれてしまっていた。
一度挫折を味わった男は強いもので、パラパラとページをめくっていく。
『ラブリコ』
と書いていた。
なに、それは?
じゃがりこ とか 踊り子 とかなら知っていますが
なんでしょうかその、奇妙奇天烈なお名前は
オメー、さてはキラキラネームだな?
役所で然るべき手続きをオススメします。
そしてその ラブリコ なる存在は、どうやら後付けで収納スペースを増やすものらしく、
引越しをしたばかりでそもそも収納するモノ自体が特に無い
のに、その斬新なアイデアに非常に感銘を受けている自分がいた。
『ラブリコで、見せる収納』
え?収納って見せていいんすか? という目から鱗な情報
こうなるとワクワクが止まらなくなり、僭越ながら、この街イチの情報通のように錯覚してしまうわけだ。その実態は簡単なDIYを放棄しただけのダサ坊なのだが
そうして早速、僕はこの ラブリコ という存在を調べ始めたわけだが、
いや、お前も、
組み立てるんかい
というか
『10,000円以下で作れるモテ部屋』といいながら
ラブリコ、お前
30,000円くらいすんのかい
二度目の挫折だった
さようなら、モテ部屋
どうせ誰も呼ばないだろう
君たちのモテ部屋に、僕を招待してくれ
銀だこくらい差し入れするから
このチョイスも若干モテないきらいがあるわけで、みんなでたこ焼きを食べるなら本来たこ焼きパーティーをすべきところを
銀だこで済ませようする、こういうところである
そりゃDIYなんてしませんよ、隙あらば楽をしようとする
以降、僕は本棚以外の家具を買うことはなく、組み立てた段ボールをテーブルの代わりとしていた。
組み立ててんじゃん、段ボール
時は流れ
つい先日、シャワーを浴びながら、ふとこの日のことを思い出していた。
『見せる収納』という概念、それは
収納じゃなくて、ディスプレイじゃね?
この世の理にたどり着いてしまった僕は、
ラブリコ愛好家 だとか、 モテ部屋連盟 のような団体に
きっと、消されるのだろう。
