数種類のキムタクに断捨離を阻止されまくっているので誰か助けて下さい
助けて下さい。キムタクに家の中が支配されています。断捨離ができません。
いらなくなったはずの服、本、雑貨、エトセトラ、その全てがキムタクの管理下にあります。
そしてそのキムタクは数種類存在しています。そもそもキムタクは人数で数えるのが正解なのか、種類で数えるのが正解なのか、
つーかキムタクって整数なの?有理数?無理数?有限小数?循環小数?いやむしろキムタクを表現するのに「数」というものを使うことが果たして正しいのか?キムタクを構成するものは?その概念とは?となってゆき、
もうこうなってくるとキムタクとは何か? という哲学、英語でいうとフィロソフィー(ここものすごくネイティブ)に発展してしまい、断捨離どころではありません。
「キムタクは数学であり、また哲学でもある。」
これです。
何がこれなのか分かりませんが、続けます。
先日も家中の不要物について断捨離計画を企てたわけですが、「2年以上着なくなった服は捨てるべきだ」というライフハックを実行している途中で
「ちょ、待てよ」
と、キムタクが直接語りかけてきます。
この服はもう本当に着ないのか 一度試着すべきじゃないのか 俺はまだイケると思うぞ
と言わんばかりに引き止めてきます。
いや、もういらねえ。こんな色褪せたステテコなんて、もう捨てるべきなんだ。
ステテコを、ここに、捨ててこ。
高尚極まりないギャグを思いついてニヤついていると、また彼が現れて言うのです。
「ちょ、待てよ」
何だそのギャグは 本気で面白いと思っているのか ステテコはまだ捨てなくて良いと思うぞ
と言わんばかりに、やはり引き止めてきます。
いや、本当にいらねえ。そもそもポケットに穴が空いていてもう何も入れることができなくなってしまっている。もう捨てるべきなんだ。
「ちょっと待ってよ」
少し丁寧になったキムタクが脳内に語りかけてきます。
どうして俺の意見を無視すんの お前いっつもそうだよな 俺はイケるっつってんじゃん
と言わんばかりに引き止めてきます。これはやや友達感覚のキムタクです。穴が何だっつーんだよ、ダメージ加工くらいがちょうど良いんだぜ?なあダチ公?というフランクさです。
いやいや本当にマジでいらねえんだわ、かれこれ5年くらいこれで夏を過ごしてたんだから、もうそろそろ新しいの買わせろって。絶対捨てるべきっしょ。
「ちょっと待って下さいよ」
勘弁して下さいよ こちらも誠心誠意やってきたのにそんなに簡単に契約破棄するなんておかしいじゃないですか まだイケるはずなのに一体何故なんですか
と言わんばかりに引き止めてきます。順調に進んでいたはずの商談が突然流れてしまった時のキムタクです。誰よりも残業をしました。上からの罵倒にも耐え、僅かな時間の中で進めてきた商談を、先方の理不尽な理由で無かったことにされたその悲しみは計り知れないでしょう。
そうは言われましても、こちらとて断捨離を諦めるわけにはいきません。ここからが勝負です。絶対に捨てるぞ という強い意志で迎え撃ちます。はい、もう捨てます。
「大変申し訳ございません、少々お時間頂戴しても宜しいでしょうか」
先方にご迷惑をかけたいという気持ちは万に一つもございません ですのでまずはこちらの話を聞いて聞いてもらえませんでしょうか それからでも遅くはないでしょう
と言わんばかりに引き止めてきます。社会に出たばかりの彼はまだ青くさく、自ら就いたこの職業に不満や愚痴を漏らすだけでした。それがどうでしょう、今では後輩のミスを庇い、己が頭を下げることでその背中を見せつけています。
感動しました。感動はしましたが、ステテコは不要です。ゴミ袋も用意してあります。もうこの袋に入れるだけなんです。はい今度こそ捨てます。
「しばし、待たれよ」
あいや待たれい ここから先は一歩も通せぬぞ ええい控えい控えおろう
と言わんばかりに引き止めてきます。
ここはニッポン、神の国。
時代は移ろい令和3年。
誰もが夢見た春の夜の、桜舞い散る平和と安寧。
不況や病は何のその。
見せてやろうぞ、我らが武人の底力。
素晴らしい。そして付け加えさせて下さい。
「キムタクは数学であり、哲学でもあり、そして歴史である」と。
さてもさても、ステテコは捨てました。これにて閉幕。